2012年7月3日火曜日

成年後見人の職務等

1 成年後見人の職務権限
  成年後見人には次のように広い職務権限が与えられています。
① 代理権
 成年後見人には財産管理権が与えられますので、それから派生する権利として、本人の全ての法律行為について代理権を持っています。
 そこで病院との入院契約、福祉サービスの利用契約、売買契約などの各種契約について、本人に代わって契約の締結・変更・解除をすることができます。
 預貯金の通帳、不動産の権利証、貸金庫の鍵などの資産関係も成年後見人が管理します。

② 同意権・取消権
 成年後見人は、本人が無断で行った法律行為を取消すことができます。例えば、本人が高価品をクレジットで購入した場合には、売買契約を取消すことができます。ただし店で日用品や食料品を購入するなど、日常生活上の行為についてまで全て取消せると、却って本人が生活に困ることが考えられるので、これらについては取消権を行使できないと定められています。

③ 身上配慮義務
 成年後見人は、本人の意思を尊重し、本人の身上に配慮する義務が課せられています。しかし、それは成年後見人が直接本人の介護を行わなければならないことを意味するのではなく、施設やヘルパーと契約するというように、本人のために必要な手配をする義務を意味すると考えられています。成年後見人に直接的な介護義務まで負わせると、成年後見人に就任してくれる人がなくなり、本人の福祉に反する結果になりかねないからです。

2 成年後見人の報酬
  成年後見人に対しては、本人の財産から相当な報酬を与えることができると定められています。具体的には、後見事務が終了したとき、または後見人に就任してから相当期間が経過したときに成年後見人から家庭裁判所に対し、報酬付与の申立を行い、裁判所の決定を受けて、本人の財産から支給を受けることになります。具体的な金額は、管理している財産の額、管理行為の具体的内容等の事情を総合的に判断して決定されますが、20万円ないし50万円が目安になるものと思われます。



2012年6月22日金曜日

過払い請求権の消滅について

過払い金とは
消費者金融に対し、5年以上支払を継続してきた方は、払い過ぎのお金を戻してもらえることがあります。これを過払い金といいます。ここ数年は過払いバブルともいえる状態でしたが、最近では過払いの御相談はめっきり減り、弁護士会の相談センターも閑古鳥が鳴いているありさまです。ところがここ1,2か月で過払いの相談が徐々に増えてきました。特徴的なのは完済後だいぶ時間が経過しているケースが多いということです。このようなケースの場合、過払い請求権が消滅してしまっていることが考えられます。

時効で消滅しているケース
過払い請求権は、法律上「不当利得返還請求権」に分類されており、その時効期間は10年です。したがって最後に弁済した時から10年以内であれば、一応は時効にかかっていないと考えられます。

ただし10年以上前に一度完済した後、しばらくしてから借金をした場合には、前のものとは別の取引と考えられるため、前の取引で発生した過払い金請求権は時効によって消滅してしまいます。

最近私が扱ったケースが参考になるでしょう。
 ・ 平成11年に1度完済。約200万円の過払い金が発生。
 ・ 平成12年、再度借入、今日まで返済継続、残債務30万円。
この人の場合には、前の取引の過払い金が平成21年で消滅しているので、後の取引の残債務がまるまる残ってしまいました。そこで私は、債権者と交渉して、残債務を免除してもらい、ゼロ和解で合意しましたが、もっと早く相談にいらしていたならば100万円以上の過払い金を回収できていたはずなので、残念です。


「ひょっとしたら過払い金があるかもしれない」とお考えの方は、早めに弁護士に相談して下さい。みすみす時効で高額の債権を失うのはもったいないですから。

武富士の場合
武富士は、平成22年10月に会社更生開始決定を受けました。債権届け出期間は平成23年2月28日までであり、この期間までに債権届をしない債権者は、債権を行使することができなくなります。したがって現時点では、武富士に対して過払請求をすることはできません。

武富士は会社更生でしたが、破産や民事再生も全く同じルールになっています。消費者金融の経営状態が悪化しているのは間違いありません。今後第2、第3の武富士がでてくる危険性があるので、1日も早く弁護士に相談されることをお勧めします。

2012年6月5日火曜日

成年後見について

司法統計によれば、平成23年の 成年後見関係事件(後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で31,402件(前年は30,079件)であり,対前年比約4.4%の増加となっています。

成年後見関係事件の中で件数が最も多いのは、後見開始の審判の申立であり、総数25,905件(前年は24,905件)で,対前年比約4.0%の増加となっています。

平成12年から始まった成年後見制度は毎年申立件数が増加しており、高齢化社会が今後も長く続くであろう日本社会の状況を見ると、上昇傾向は継続することでしょう。

成年後見とは
成年後見とは、認知症や知的障害、精神障害などの精神上の障害により、常時判断能力を欠いている状態にある人の能力を補う制度です。

申立
成年後見の申立権者として法律上定められているのは本人(精神障害が回復した時点で申立てる場合です)、配偶者、4親等内の親族、市町村長、検察官です。申立は、弁護士に依頼しなくとも可能ですが、関係人の戸籍謄本や後見登記が行われていないことの証明書などの添付書類の準備や申立書の作成が御自分でお出来にならない場合には、弁護士に依頼することができます。

誰が成年後見人になるのか
後見開始の申立をする場合には、後見人の候補者を指定しますが、一般的なのは親族が自分を後見人の候補者として指定する場合です。ただ親族が複数いて、利害関係が対立している場合などには、特定の親族を成年後見人と定めることができませんので、弁護士や司法書士の中から裁判所に成年後見人の候補者を推薦してもらうことになります。

鑑定費用
成年後見の審判を受けるには、被後見人の精神鑑定を受ける必要があるため、その費用として5万円から10万円までの範囲内で鑑定費用をあらかじめ納めなければなりません。申立人が取りあえず立替えておいて、審判が発せられた後に被後見人の財産から支払を受けることになります。

2012年5月22日火曜日

面会交渉の決め方

改正された民法766条により、親と子供との面会交流が子の監護について必要な事項であることが明記されたことは前に説明したとおりです。

1 それでは面会交流に関する事項はどのように決めるのでしょうか。
 ①協議離婚の際に当事者の話合いで決める。
これが一番簡単な決め方ですが、口約束がほとんどですし、仮に文書が作成されたとしても、履 行を確保することは難しいでしょう。

 ② 調停で決める。
離婚調停や面会交流を求める調停において合意ができると調停調書が作成されます。調停調書については、後述のとおり履行確保の手段がありますので比較的安心です。調停で決める場合には、例えば「1か月に1回程度」というように面会の頻度は定められますが、具体的な面会方法については、「子供の福祉を考慮し、当事者が協議して定める」というように抽象的な記載になってしまいます。それは、面会の時期、方法は事前に一律に決めることが事実上不可能だからです。その結果、面会交渉が約束通り履行されないことが少なからず発生します。

 ③ 審判で決める。
話合いや調停で決まらない場合には、家庭裁判所に審判を求めることになります。調停が不成立になった場合には、自動的に審判に移行します。裁判所の審判も基本的には、調停と同じような条項となりますので、履行されない危険性があることは調停と同じです。


2 履行確保
子供を引き取った親は、元配偶者に子供を会わせることには消極的です。子供を取られてしまうのではないかという不安、子供に心理的な悪影響を与えるのではないかという不安、手続の煩雑さなどの要因が影響し、面会交流の約束を守らないケースが少なくないのが実情です。その場合、面会できない親には次のような法的対応が考えられます。
 ① 履行勧告
家庭裁判所に義務の履行を勧告するように申出をすることができます。これはあくまでも勧告ですので強制力はありません。相手が勧告に従わない場合には、次の間接強制を求めることになります。
 ② 間接強制
間接強制というのは、相手方が義務を履行しない場合、一定額の支払いを義務付ける強制執行の一形態であり、面会を直接強制することはできません。結局、相手方がとことん面会を拒む場合には、面会することができないことになります。これは子供に会うわせるという身分上の行為を直接強制することは基本的人権を損なう恐れがあるという考え方に基づくものです。
 ③ 慰謝料請求
面会交流できないことによって被った精神的被害について損害賠償を請求することが可能です。面接強制と同様、一定の金銭の支払いを求めることで面会交流させるように相手方に促す効果があります。





2012年5月11日金曜日

面会(面接)交渉に関する民法改正


離婚後に親権者とならなかった親が子供と会って交流することを面会(面接)交流といいます。

これまで面会交流は、明文規定がないまま、民法766条の子の監護に関する事項として認められてきましたが、明文規定の必要性がかねてから言われていたことから、平成24年4月に施行された新しい民法766条によって明文化されました。

その内容は、次のとおりです。
「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」


但し、この改正は従来実務上認められていた面会交流を確認したという性質が強く、面会交渉の具体的内容は従来の解釈により決めることになると考えられます。


祖父母の面会交流
改正法により明確になったのは、面会交流の申立てが認められるのは父又は母に限られるということです。これまで実務上、祖父母の面接交流申立は認められていませんでした。これに対し、諸外国の例を引用して、祖父母についても面接交流を認めるべきとの立法論がありましたが、今回の改正は、その立場を採用しなかったわけです。祖父母については親が面接をする際に事実上同席して面会をするという従来の方法を踏襲することになります。

2012年4月25日水曜日

交通事故の被害者になった時どうすればいいか?

交通事故の被害にあった時に漫然と対応してしまうと後で損害賠償の支払いが受けられず後悔することがありますので、次の諸点に注意して下さい。

1 加害者側の確認
交通事故の被害に遭った場合、後に損害賠償を請求するのに相手方を特定する必要があります。具体的には加害者から運転免許証身分証明書を見せてもらい、氏名・住所・生年月日をメモして下さい。運転者と車の所有者が別の場合、所有者に対しても損害賠償請求をすることができますから、自動車検査証(車検証)や自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責証明書)の提示を受けて、所有者・使用者をメモしておいて下さい。

2 警察への届出
警察に届出をしないと、保険金請求手続きに必要な交通事故証明書が発行されないからです。ずるい加害者の場合、「警察に届けないで、示談にしましょう」と言ってくることがありますが、それは責任逃れの行動ですから、絶対に警察を呼んで下さい。警察は、重傷でないと物損事故扱いにしがちです。それは実況見分や供述調書の作成という面倒な手続を省きたいからです。次項にも関係しますが、少しでも怪我をしていると疑われる時には傷害事故として扱ってもらいましょう。

3 救急車を呼ぶ
事故直後は興奮状態にあるためか怪我をしていることが分からず、大したことがないと医者に見せない人が結構います。しかし痛みなどの症状は、その日の夜や翌日になって出てくることが少なくないのです。ですから大したことがないと思っても念のため救急車を呼んで医師の診断を受けて下さい。

4 保険会社への連絡
あなたが自動車保険に加入している場合には、保険会社に自己通知をしましょう。加害者側が任意保険に加入していない場合などには、あなたの保険を使用して保証してもらうことがあるからです。

5 証拠の収集
事故直後の現場の状況や車の損傷状態が後日重要な証拠となることがありますので、携帯電話などを使って写真撮影をしておきましょう。
目撃者がいた場合には、忘れず名前と連絡先を聞いてメモしておきましょう。

2012年4月19日木曜日

遺産分割調停は大変です!

1 申立時の留意点
① 当事者
遺産分割調停事件の当事者は、共同相続人全員です。住所が判明している一部の相続人だけを相手方にすることはできません。相続人が大勢いて、一部の相続人とは音信不通になっているので住所が分からないというケースも少なくありませんが、その場合には、住所が分からない人の戸籍の附票を取り寄せます。戸籍の附票には住民登録された住所がすべて記載されていますから、これにより最後の住所が判明します。

② 管轄裁判所
遺産分割調停の管轄裁判所は、相手方の住所地の家庭裁判所です。例えば、あなたが仙台在住で他の相続人が全員東京在住の場合には、東京家庭裁判所が管轄裁判所となります。他の相続人の中に一人でも仙台在住の方がいれば、仙台家庭裁判所に申立することができます。 


③ 財産目録
調停申立書には財産目録を付けなければなりません。ただ全ての遺産を記載することができない場合には、不動産など知っている財産だけを記載し、「その余は、不詳」と書いておけば大丈夫です。

④ 申立費用
被相続人1名につき収入印紙1200円と郵便切手が当事者1名につき560円(仙台家庭裁判所の場合)です。

⑤ 弁護士を依頼すべきか否か
調停は話合いの手続ですから弁護士を頼まず、自分ですることは可能です。ただ調停申立をする場合には、被相続人及び相続人全員の戸籍謄本などをすべてそろえなければなりません。これが実は、すごく大変なのです。しかも調停が始まると遺留分や寄与分といった法律的問題について主張をしなければならない場合もでてきます。やはり弁護士を依頼された方がいいでしょう。弁護士費用は、遺産額によって決められますが、遺産額の評価方法や遺産額の何%を着手金額とするかは、弁護士によって千差万別ですが、日弁連の統計によると次のようになっています。

30万円前後   29.7%
50万円前後   44.1%
70万円前後    9.2%

2 調停の進め方
調停には、調停員2名が立会い、当事者から事情を聴き、話合いによる解決を目指します。当事者の数にもよりますが、2時間位かかるのが一般的です。調停期日は、大体1か月に1回の割合で定められます。

被相続人の面倒を見ていた一部の相続人が遺産を管理していて、他の相続人には遺産を隠すことも少なくありません。この場合、他の相続人が遺産の開示を求めたり、独自に遺産の調査をしたりするのですが、どうしても時間がかかります。遺産の全貌が明らかになるまでに1年以上かかるというケースも少なくありません。遺産分割調停は時間がかかると思って間違いありません。中には10年位かかるケースもあるのです。




2012年4月16日月曜日

遺産分割

親が亡くなって財産が遺された場合、相続問題が発生します。相続人が一人ならば遺産をどのように分けるのかという遺産分割の問題は発生しませんが、相続人が複数いらっしゃる場合には遺産分割手続は避けて通れません。

遺産分割がすんなり決まれば良いのですが、トラブルが発生し、解決までに途方もない時間がかかることが少なくありません。

遺産分割には、以下のとおりいろいろな形態があります。
1 遺言による分割
亡くなった方(被相続人)が遺言で遺産分割の方法を決めていてくれる場合です。
遺言があれば遺産分割は、スムーズに決まることが多いのです。ですから子供たちが遺産問題で争わないようにしたいとお考えれあれば、遺言を作成することをお勧めします。

2 協議による分割
話合いで遺産分割方法を決めるやり方です。話合いで決まれば弁護士の出番はありません。
しかしお金が絡むので、なかなか話合いで決めることができません。

3 調停による分割
相続人の一部が遠隔地に住んでいる等の理由で話合いができなかったり、話合いをしたものの合意できなかった場合には、家庭裁判所で調停を行わざるをえません。
調停は、話合いなので必ずしも弁護士を頼む必要はありません。しかし、相続財産の範囲や寄与 分(一部の相続人が相続財産の維持や増加に寄与している場合、その金額)について争いがある場合には、法律的な主張をする必要がありますので、弁護士を依頼された方がいいでしょう。

4 審判による分割
家庭裁判所の裁判官に「審判」という判断をしてもらって決めるやり方です。
調停が成立しない場合には、調停の申立時に審判の申し立てがあったものとみなされます。
これは「審判」という名前の裁判ですから、適切な主張立証をしないと負けてしまいます。
したがって弁護士を依頼して手続を進める必要があります。

われわれ弁護士が主として担当しているのは、遺産分割調停です。審判となると依頼者が全面的に敗訴するリスクを負わなければならないので、多少の譲歩をして調停で決めることが多いのです。

次回は、遺産分割調停について説明します。

2012年4月12日木曜日

不貞行為の慰謝料

不貞をした夫に対する慰謝料の相場についてご説明します。

最近の傾向として、妻側が裁判で請求する金額は500万円前後の金額が標準的です。それに対し、裁判官が判決で認めてくれる金額は200万円前後が多いというのが私の感覚です。

被害者の立場からすれば、「何でそんなに低い金額で我慢しなくちゃいけないの?」とお思いでしょうが、日本の裁判では慰謝料額はかなり低く抑えられているのです。

ただ慰謝料の金額は、以下の要素を総合的に判断して決められますので、夫側の有責性が極めて高い場合には高額な慰謝料が認められることもあります。

① 夫婦の収入
② 不貞関係の長短
③ 子供の有無
④ 不貞行為の態様

例えば、高収入の夫が女にマンションを買い与え、何年もの長きにわたって不貞行為を続け、子供まで作っていたというケースでは慰謝料が1000万円以上ということも十分考えられます。一方、ゆきずりの女性と1回だけ関係を持ったという場合には、100万円以下になることが多いでしょう。

2012年4月3日火曜日

不貞行為の立証

夫が(妻が)不倫をしているのでは?と悩んでいらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。長年連れ添った勘で不倫をしていると確信を持っていても、それが立証できなければ裁判には勝てません。しかし不倫の立証は、そんなに簡単なものではありません。肉体関係の存在を立証することが必要なのですが、それが案外難しいのです。具体的に、裁判で使われる不倫の証拠についてご説明します。

メール
不倫相手とやり取りしたメールの中には、いかにも親密な関係を疑わせるものがあります。しかし、メールに露骨に肉体関係のことを記載している例はほとんどありません。単に親しげなメールのやり取りをしているだけでは不倫の立証にはなりません。

写真
不倫相手と一緒に撮影した写真が携帯やカメラから発見されることがありますが、単なるスナップ写真では不倫と証拠としては不十分です。


GPS
以前、妻が夫の車にGPS機能の付いた携帯電話を忍ばせ、位置情報で夫がラブホテルに入ったのを確認し、ホテルから出てきた夫と不倫相手を取り押さえたというケースがありました。最近スマホのアプリを利用して配偶者の位置情報をゲットできるようになったと報道されましたよね。このようなGPS情報はかなり有力な証拠になります。

探偵事務所
探偵事務所に調査を依頼して、配偶者の行動を追跡するという方法も選択肢の一つとなりますが、問題なのは莫大な経費がかかるということです。探偵事務所の料金は、成功報酬ではなく、調査を行った時間料金ですので、数日間尾行をしてもらうだけで数十万円の手数料を支払ったというケースが一般的なので、よほど経済的に余裕のある方以外にはお勧めできません。

自白
経験上、不倫を疑われて配偶者や親族から厳しく追及されると半分以上の人は不倫を認めます。やはり良心には逆らえないのです。幸い認めた場合には、その旨一筆書かせて署名押印してもらいましょう。これが決定的な証拠となります。一旦認めても後で否定するというケースも少なくありません。その場合、書面がないと「言った、言わない」の水掛け論になってしまいますので、認めさせたならば必ず書面を書かせて下さい。



2012年3月29日木曜日

刑事事件の結果・略式命令

1件残っていた刑事事件が、罰金に決まりました。

まだ運が残っているようです。

罰金は、正式裁判によらず、略式裁判で行われることがほとんどです。略式裁判は、在宅略式在庁略式の二つに大別できます。前者は、略式命令が自宅に送られてきますので、それを持って検察庁に行って罰金を納めるやり方です。後者は被疑者を裁判所に呼んで略式命令を直接渡す方法です。逮捕勾留されている被疑者の場合は在庁で行うことがほとんどで、通常はその日のうちに罰金を支払って釈放してもらいます。

なぜ在庁で行われるかというと、被疑者が所在不明となり略式命令を送達できなかったり、罰金が未納になることを防止するためです。

2012年3月27日火曜日

刑事事件の流れ

万一あなたが刑事事件で警察に逮捕された時の手続の流れについて説明します。

①警察の持ち時間 48時間
  警察は被疑者を逮捕した場合、48時間以内に釈放するか検察庁に事件及び身柄を送致しなければなりません。後者のことを「送検」と呼んでいます。ひょっとしたらニュースでお耳にしたことがあるかもしれませんね。

②検察官の持ち時間 24時間
  検察官は事件の送致を受けてから24時間以内に釈放するか勾留請求をしなくてはなりません。

③最初の勾留 10日以内
  検察官は、勾留の満期(10日満期)までに被疑者を起訴するか釈放するかについて方針を決  めなければなりません。しかし、事件が複雑などの理由から10日以内に事件を処理できない 時には勾留延長を請求できます。

④勾留延長 最大10日


以上のように一旦警察に逮捕されてしまうと、逮捕勾留で23日間身柄を拘束されかねません。しかも連日のように警察官や検察官の取調べを受けることが一般的なので、勾留されている被疑者の方の精神的ストレスは計り知れないのです。しかも公判請求(起訴)されてしまうと、多額の保釈金を積んで保釈してもらえないかぎり、身柄拘束が延々と続くことになります。

弁護人は、被疑者の方と面会をしたり、刑事手続の流れや被疑者の権利を説明するなどして、納得できない刑事処分を受けることがないように手助けをするのが仕事です。

弁護人の仕事として、起訴後の裁判手続ももちろん大切ですが、起訴されずに釈放してもらうことが一番大切だと思っています。裁判のため勾留が続くと被疑者本人はもちろん、家族の物心両面の負担が甚大だからです。

これはラッキー以外の何物でもないのですが、ここ2年ほど、私が起訴前弁護を担当させてもらった事件は全て不起訴や罰金で終わっていて、公判請求されたことはありません。最近担当させてもらった2件のうち、1件は10日満期前に釈放してもらいました。もう1件は間もなく延長満期を迎えますが、起訴されずの終わることを願っています。

2012年3月24日土曜日

親権問題

当事務所で皆さんから多くご依頼を受けさせていただいているのは離婚事件です。
離婚事件では多くの場合、離婚自体については合意していますが、親権を巡って争いになり、調停⇒裁判となるケースがかなり多いのです。

裁判になった場合、圧倒的に有利なのは子供と同居している母親です。私が担当した事件で子供と同居している母親が親権を失ったのは1件もありません。

子供と同居していても父親の場合には、親権を失うことがちょくちょくあります。やはり子供、とりわけ年少の子供の養育は母親の下で行われるのが望ましいという考え方が有力なのです。

子供と同居していない父親から親権を取りたいとのご相談をお受けする時には、率直に親権を取れる可能性はほとんどないとお話しています。しかしそれでも親権が欲しいとおっしゃるお父さんは少なくありません。そのような方は、大体において別居後子供と会わせてもらっておらず、子供がどのような環境で養育されているか不安を抱いていらっしゃいます。

このようなケースの場合、私は離婚訴訟で家庭裁判所調査官の調査を受けていただくことにしています。この調査は、家庭裁判所調査官という子供の専門家が当事者双方や子供たちと面談したり、家庭訪問をしたり、親に子供を会わせて両者の関係性を観察するなどして詳細な調査報告書を作成してくれます。これを読めば、ほとんどの依頼者が子供のために何が最も適切なのかを理解し、納得して、親権に対するこだわりを手放して下さいます。

親権問題でお悩みのお父さんは検討してみてはいかがでしょうか。