2012年6月22日金曜日

過払い請求権の消滅について

過払い金とは
消費者金融に対し、5年以上支払を継続してきた方は、払い過ぎのお金を戻してもらえることがあります。これを過払い金といいます。ここ数年は過払いバブルともいえる状態でしたが、最近では過払いの御相談はめっきり減り、弁護士会の相談センターも閑古鳥が鳴いているありさまです。ところがここ1,2か月で過払いの相談が徐々に増えてきました。特徴的なのは完済後だいぶ時間が経過しているケースが多いということです。このようなケースの場合、過払い請求権が消滅してしまっていることが考えられます。

時効で消滅しているケース
過払い請求権は、法律上「不当利得返還請求権」に分類されており、その時効期間は10年です。したがって最後に弁済した時から10年以内であれば、一応は時効にかかっていないと考えられます。

ただし10年以上前に一度完済した後、しばらくしてから借金をした場合には、前のものとは別の取引と考えられるため、前の取引で発生した過払い金請求権は時効によって消滅してしまいます。

最近私が扱ったケースが参考になるでしょう。
 ・ 平成11年に1度完済。約200万円の過払い金が発生。
 ・ 平成12年、再度借入、今日まで返済継続、残債務30万円。
この人の場合には、前の取引の過払い金が平成21年で消滅しているので、後の取引の残債務がまるまる残ってしまいました。そこで私は、債権者と交渉して、残債務を免除してもらい、ゼロ和解で合意しましたが、もっと早く相談にいらしていたならば100万円以上の過払い金を回収できていたはずなので、残念です。


「ひょっとしたら過払い金があるかもしれない」とお考えの方は、早めに弁護士に相談して下さい。みすみす時効で高額の債権を失うのはもったいないですから。

武富士の場合
武富士は、平成22年10月に会社更生開始決定を受けました。債権届け出期間は平成23年2月28日までであり、この期間までに債権届をしない債権者は、債権を行使することができなくなります。したがって現時点では、武富士に対して過払請求をすることはできません。

武富士は会社更生でしたが、破産や民事再生も全く同じルールになっています。消費者金融の経営状態が悪化しているのは間違いありません。今後第2、第3の武富士がでてくる危険性があるので、1日も早く弁護士に相談されることをお勧めします。

2012年6月5日火曜日

成年後見について

司法統計によれば、平成23年の 成年後見関係事件(後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で31,402件(前年は30,079件)であり,対前年比約4.4%の増加となっています。

成年後見関係事件の中で件数が最も多いのは、後見開始の審判の申立であり、総数25,905件(前年は24,905件)で,対前年比約4.0%の増加となっています。

平成12年から始まった成年後見制度は毎年申立件数が増加しており、高齢化社会が今後も長く続くであろう日本社会の状況を見ると、上昇傾向は継続することでしょう。

成年後見とは
成年後見とは、認知症や知的障害、精神障害などの精神上の障害により、常時判断能力を欠いている状態にある人の能力を補う制度です。

申立
成年後見の申立権者として法律上定められているのは本人(精神障害が回復した時点で申立てる場合です)、配偶者、4親等内の親族、市町村長、検察官です。申立は、弁護士に依頼しなくとも可能ですが、関係人の戸籍謄本や後見登記が行われていないことの証明書などの添付書類の準備や申立書の作成が御自分でお出来にならない場合には、弁護士に依頼することができます。

誰が成年後見人になるのか
後見開始の申立をする場合には、後見人の候補者を指定しますが、一般的なのは親族が自分を後見人の候補者として指定する場合です。ただ親族が複数いて、利害関係が対立している場合などには、特定の親族を成年後見人と定めることができませんので、弁護士や司法書士の中から裁判所に成年後見人の候補者を推薦してもらうことになります。

鑑定費用
成年後見の審判を受けるには、被後見人の精神鑑定を受ける必要があるため、その費用として5万円から10万円までの範囲内で鑑定費用をあらかじめ納めなければなりません。申立人が取りあえず立替えておいて、審判が発せられた後に被後見人の財産から支払を受けることになります。